ややこしい!フランスの医療制度
フランスの医療は世界でもトップクラスなので、安心して治療を受けられますが、厄介なのが複雑な医療制度。日本人にとっては、馴染みのないシステムゆえに最初は戸惑うかもしれません。
フランスと日本で最も異なる点は、医療の分業が徹底されていることでしょう。日本では、検査、診察、薬の受け取りを、一つの病院内で済ませられますが、フランスではそれぞれ別の医療機関で行います。また、主治医制度が導入されており(ただし推奨されているだけであって強制ではありません)、まずは主治医による診断を受け、さらなる診察が必要だと判断された場合に専門医や総合病院の医師を紹介してもらいます。はじめから専門医などを受診することも可能ですが、ほとんどの場合、主治医を通した方が医療費は安くなります。
主治医は開業医や一般内科の医師であることが多く、フランス人は近所の医師や親と同じ医師を主治医としており、主治医を探すのに困ったら、現地在住の知人または近隣の薬局からアドバイスを貰うと良いでしょう。特に薬局は近隣の医師のことをよく知っているので、非常に頼りになります。
また、日本と異なり、フランスは検査をするだけでも別の医師へ行くことがほとんどです。例えば主治医や専門医からレントゲンとエコーが必要だと言われたら、レントゲンの医師とエコーの専門医を訪ね、そこで必要な検査を行い、検査結果の書類を揃えます。予約が必要な検査機関も多いので、書類を揃えるだけでも時間と労力を費やし、なかなか簡単には進みません。
保険に関しては、外国人であっても就労する場合は強制加入となるCarte Vitaleと民間保険のMutuelleがあります。Carte Vitaleのカード(いわゆる健康保険証)を提示することで、70%の払い戻しを受けられますが、持っていなければ全額自己負担です。Mutuelleは民間の保険なので契約内容によって異なりますが、高額の保険に加入すると入院費用や手術費用が全額適用されることもあります。
公立病院は予約が取りにくい
主治医の判断によって病院への紹介状を書いてくれますが、一般的には指定された病院の専門医に電話で予約を取ることになります。しかし、大変なのは公立病院の場合、平均的な予約待ちが約2~3ヶ月で、すぐに対応してもらうことができません(緊急の場合を除く)。
また、難しい手術などは公立の総合病院で行われることが多く、治療費は高くならないものの、時間と手間が掛かってしまいます。一方、私立病院は医療費こそ高額ですが、専門医への受診を直接依頼することができるため、非常にスピーディーで、なおかつサービスも良いので安心して利用することができます。さらに、私立の病院なら、海外の旅行保険も適用されることが多く、内容によっては治療費の大部分をカバーしてもらうことが可能です。
どちらにもメリットとデメリットはありますが、在住日本人の多くは日本語の通じる私立病院を主に利用しています。
水道水の飲用は?
フランスの水道水はそのまま飲用することができます。なかでもパリの水道水は世界で最高基準の衛生を保証する細かい法規をクリアしており、1日に何度も水質の調査をしているため、安心して飲むことができると言えるでしょう。
一方で気をつけたいのは、人口3万人以下の小さな町。消費者団体の研究によると、これらの農村部とパリ都市部では水質の異なる水道水が供給されていることが判明し、なかには衛生基準に達しない水があったとされています。洗濯などには問題ありませんが、このような地域で水を飲用する際はミネラルウォーターなどを購入しましょう。
なお、フランスの水道水は日本と異なり硬水です。健康への害はなく、むしろカルシウムやマグネシウムなどを多く含むため、一般的には身体に良い水と言われていますが、慣れるまではお腹を壊してしまう人もいます。