帰国後のことも視野に入れて

帰国の飛行機

海外移住からの帰国

飛行機

期間が決まっている留学や赴任、もしくは最初から「1年だけ海外に住んでみよう」と考えてロングステイをしていた方にとっては、帰国をすることもまた予定の一つでしょう。しかし、「これからは海外で生活をする!」と日本を旅立ったものの、気持ちや環境の変化に伴い、帰国の決断を下す方もいます。

現地での情勢が大きく変わってしまうなど、本人の意思とは異なる側面で帰国をするケースもあるので、移住の際には、もし帰国をすることになったら…?と、先のことを考えておきましょう。

海外移住者が帰国をする理由

海外で生活をしている方が帰国の選択をする際、その理由は人によって様々あります。不可抗力的な部分が関係していることもあれば、自らの意思で帰国を決める方もいます。いずれにしても、海外に住むことも個人の自由であれば、帰国をすることもまた個人の自由。一度、国外で暮らしたからこそ見えて来る日本の素晴らしさや課題もあることでしょう。

ここでは、現地情勢や災害などによる不可抗力の帰国を除いて、主な帰国の原因を記載していきます。

ビザの問題

就労や留学、結婚などのビザを取得している方以外で、非常に多い帰国理由がビザの問題。国によってビザの特徴は異なりますが、ある一定の期間や回数に達すると、新しくビザを発行してくれないこともあります。また、ビザ取得のための費用や労力に疲弊し、帰国をする人も少なくありません。

収入の問題

現地採用の方の場合、現地で暮らし続けるには充分な給与でも、いずれ日本で暮らす時のことを考えると、思っていた以上に貯金ができず、帰国をされる方がいます。また、観光ビザや学生ビザの方でも、収入がなくなり貯金が減り続ける現状に不安を覚え、帰国の決断をする方がいます。

移住前は、家賃や物価を中心に予算を組み立てるので、「このくらいの貯金で数年は暮らせる」と思ってしまいがちですが、実際に暮らしてみると、想定外の費用が掛かることも多く、見積もりが甘いと予定よりも早い帰国となってしまいます。

家庭の事情

シニア層の多くはパートナーの介護、それ以外の世代になると親の介護や親の他界など、家族環境の変化に伴い帰国をされる方もいます。また、赴任者と帯同家族が海外に住んでいる場合、子供の教育面に不安を感じて、母子だけが先に帰国をすることもあります。

日本への愛着

四季を感じる日本の気候や旬を感じさせる日本の食文化など、長く育った環境を懐かしみ、日本に戻られる方もいます。また、治安や衛生面、サービスやモラル、娯楽や社会保障制度など、日本を離れたからこそ感じることができた素晴らしさに、拠点を戻したいと願う方も少なくありません。

帰国後のことを考えた出国を

トランクケース

「絶対に戻らない!」と固く決心をしていても、帰らざるを得ない事情が出てしまうことがあります。帰国直前に考えても間に合うことの方が大半ですが、帰国前に少しでも確認をしておくと、一時帰国のついでに手続きを進めることができる項目もあり、色々とスムーズです。

帰国後の住居

持家がある方は大丈夫でしょうが、賃貸物件に住んでいた方は帰国後に、まず部屋を借りるなど滞在先を確保しなければなりません。しかし、海外での生活に慣れてしまった人にとって、日本の賃貸契約は複雑で煩わしいものです。物件や管理会社によって条件は異なりますが、一般的には物件を借りる際に、保証人や収入を証明する書類が必要となります。仕事がないと部屋が借りられず、部屋がないと仕事が見つけられず、さらに追い打ちをかけるように、申し込み後には審査も行われ、結果が伝えられるまで時間を要します。

近年は、家具や家電が備え付けのマンスリータイプの物件が増えており、管理会社によっては、帰国前に申し込んでおくことで、到着した日から入居が可能です。当日、管理会社の営業時間内に鍵を受け取りに行けない場合、日本国内の指定された住所に、あらかじめ鍵を送付するサービスも実施されています。

運転免許証

日本には戻らないつもりで、運転免許証の更新をせずに出国をされた方でも、失効後1年以内であれば免許証の再取得ができます。入院や赴任など特別な事情があった方は、失効後1年以上が経過していても、やむを得ない状況と判断されると、特例として3年以内であれば再取得可能の対象になります。

海外では、日本国内の自動車免許の更新ができないうえに、代理人でも不可となっています。本人が日本国内で行うしかないので、将来的に日本へ戻る可能性を考慮し、一時帰国のタイミングなどで、更新を済ませておきましょう。
※更新期間前でも、海外に住んでいる方は特例として更新を受けることができます。

国民年金・生命保険

国民年金は日本に再び住所登録をすると強制加入となりますが、移住中に任意加入をしていないと、納付額が減るため、受給額も減ってしまいます。しかし、年金に関しては人によって考え方が異なり、今後も同様の制度が維持されるのか分からない部分もあるので、どれが正しいとは断言できません。

また、現地で生命保険に加入することを前提に、日本で加入していた生命保険を解約される方もいます。保険会社によって異なりますが、ほとんどの会社で、海外からでも解約は可能なので、個人年金の積み立てがある方も含めて、慎重に判断しましょう。

就職・転職

海外での生活に伴い、日本の仕事を辞めた方は、帰国後のことも視野に入れた海外生活を送ることで、就職・転職活動に役立ちます。海外に住んでいただけは、正直なところ大きなアピールポイントにはなりません。現地の言葉を習得するなり、現地の文化に関係するスキルを身に付けるなり、その国だからこそできることを経験し、日本での就職・転職活動に活かせるようにしましょう。

そして再び海外へ

時代は変わり、必要なビザと一定の貯蓄と健康な身体さえあれば、誰でも海外移住ができるようになりました。海外に住むことで経験できた解放感や好奇心、そして日本へ抱いた豊かな想いを胸に、もう一度、日本国内での生活が始まります。

その中には、数年後に再び、暮らしの拠点を求めて海外へ旅立つ人もいます。誰でも自らの意思で、多くの国へ行き来できる時代になったからこそ、文化や景色の違いを堪能し、飽きや不便さも楽しみに変えて、オリジナリティに溢れた日常を旅してみましょう。