【カナダ移住体験談】カナダのクリスマス文化

移住してから変わったクリスマス観

カナダに移住してから、季節の行事を「イベント」としてではなく、暮らしの一部として体験するようになりました。

その中でも、冬になると楽しみにしているのが「キャンディーケーンレーン」と呼ばれるクリスマスの風物詩です。

市内の、ある住宅エリア一帯が、まるで絵本の中の世界のように豪華なクリスマスライトで彩られ、その通りは自然とキャンディーケーンレーンと呼ばれるようになりました。

観光地ではなく、あくまでも普通の住宅街で行われていることが、この光景をより特別なものにしているように感じます。

キャンディーケーンレーン

キャンディーケーンレーンの一番の特徴は、すべての飾り付けが住民によるボランティアで成り立っていることです。

市や企業が主催しているわけではなく、各家庭が自発的に時間やお金をかけて、家や庭を飾り付けています。

巨大なサンタクロースやトナカイ、音楽に合わせて光が動くライト、細部までこだわったテーマ装飾など、家ごとに個性があり、歩いているだけで自然と笑顔になります。

このエリアには毎年多くの人が集まり、知らない人同士でも「きれいですね」「この家すごいですね」と声を掛け合う光景が当たり前のように広がっています。

住人の本音

一方で、このエリアならではの問題もあります。

これほど有名なキャンディーケーンレーンであるがゆえに、住民の中には「毎年飾り付けをしなければならない」とプレッシャーを感じる人もいると言います。

なかには、このエリアの家はあえて買わないと決めている人もいるほどです。

カナダでは個人の選択や価値観が尊重される一方で、地域の伝統や雰囲気を大切にする文化も根強く、そのバランスの中で人々が暮らしていることを改めて感じました。

楽しいだけではない、こうした側面も含めて移住後に見えてくるリアルなカナダの姿だと思います。

集まる人も色々

私は犬の散歩を兼ねてキャンディーケーンレーンを訪れました。

リードをつけた犬と一緒に歩く家族、ベビーカーを押しながら写真を撮る人、カップルで手をつなぎライトアップを楽しむ人など、本当にさまざまな人が集まっていました。

ホットチョコレートを片手に夜の散歩を楽しむ人も多く、寒さの中にも温かさを感じます。車で通り抜ける人もいますが、歩いて回ることで家族や友人との会話が自然と弾み、この時間そのものを味わっているように見えました。

特に印象的だったのは、そこに集まる人たちがとてもゆったりとした時間を過ごしていることでした。

写真を撮る人もいれば、ただ黙ってライトを眺めている人もいて、小さな子供たちがはしゃいでいても、周囲の大人たちが微笑みながら見守っています。

犬を連れている飼い主同士が自然と会話を始める場面にも遭遇し、私も犬を飼っているので(犬の散歩を兼ねてきたので)、なんだか嬉しい気持ちになりました。

冬は外に出るのが億劫になりがちですが、こうした場所があることで、夜の散歩そのものが楽しみになり、気持ちが前向きになります。

根付いていく文化

また、飾り付けの豪華さだけでなく、「続けてきた時間」にも価値があるのだと感じました。

何年も同じ家が同じテーマを守っていたり、毎年少しずつ進化させていたりして、見ている側にも「今年もこの季節が来た」と感じさせてくれます。

海外に移住すると、季節の区切りや文化のリズムが最初はつかみにくいですが、カナダのキャンディーケーンレーンみたいな恒例行事があることで、一年の流れが少しずつ自分の生活の中にも根づいていく気がします。

まとめ

帰り道、ホットチョコレートの甘さと手の冷たさ、そして家族との何気ない会話が、不思議と心に残りました。

大きなイベントではないのに、満たされた気持ちになるのは、誰かが善意で作ってくれた景色を、私たちが静かに受け取っているからかもしれません。

来年もまた来ようと思える場所があることは、移住生活の中での小さな充実感につながっています。

キャンディーケーンレーンの灯りを眺めながら、カナダでの暮らしは、こうした小さな体験の積み重ねによって、少しずつ自分の居場所になっていくのだと実感しました。

candycane lane