若者の海外移住先、世界のトレンドはアジア
海外移住先にアジアを選ぶ若者が急増
―成長が続くアジア、中東へ移住する動きが世界的に広がっている。
2018年4月1日の日本経済新聞では、『かつて豊かな欧米を目指したアジアの若年層も同じアジア域内を移住先に選ぶケースが急増し、労働供給と経済発展を支えている』と伝えています。また、これらの傾向は近年、急速に高まったと見ています。以下、日本経済新聞の引用です。
国連によると、2017年時点の世界全体の移住者は2億5800万人と、2000年から5割増えた。米国に住む移住者が5000万人で最も多いが、アラブ首長国連邦(UAE)、インドなども上位だ。全体の3割相当、およそ8000万人が中東を含むアジアに住む。地域別では15年に欧州を抜き、最大となった。
(引用:日本経済新聞2018年4月1日付 若者、移住先はアジア)
日本人の海外移住の動向は?
海外移住.com 編集部では、この世界的な流れが日本人移住者にも当てはまるのか?を調べてみました。「日本人の海外移住先上位50ヵ国」に2017年の時点で暮らしていた日本人移住者は約133万8000人。世界全体の移住者が約2億5800万人なので、そのうち約0.52%は日本人です。国別では、やはり米国への移住者が最も多く、約44万8400人(ハワイ、グアム含む)。日本人移住者の約33.6%は米国で暮らしていることになります。
地域別では、「北米」が日本人移住者全体の約37%(49万1844人)を占め、昭和60年以降一貫して首位を維持しており、次いで「アジア」の約29%(39万2216人)、「西欧」の約16%(21万3202人)と続き、これらの3地域だけで全体の8割を占めています。
国別で詳細を見てみましょう。
国名 | 日本人移住者数 (約) | 全体の% (約) |
米国 | 448,400人 | 33.6% |
中国 | 128,100人 | 9.6% |
オーストラリア | 92,600人 | 6.9% |
タイ | 70,300人 | 5.3% |
カナダ | 70,200人 | 5.3% |
イギリス | 65,000人 | 4.9% |
ブラジル | 53,400人 | 4.0% |
ドイツ | 44,000人 | 3.3% |
フランス | 41,600人 | 3.1% |
韓国 | 38,000人 | 2.9% |
シンガポール | 37,500人 | 2.8% |
この上位11ヵ国のみで全体の8割以上を占め、12位以下にはマレーシア、台湾、インドネシア、ニュージーランド、フィリピン、ベトナムとアジアの国が続いています。
日本人移住者の全体数は133万8,477人で前年より2万1,399人(約1.6%)の増加。外務省が統計を開始した昭和43年以降、過去最多を記録し、世界の流れと同じように日本でも海外へ移住する人が増えていることが分かります。なお、この場合の移住者とは長期滞在者(3ヶ月以上の海外在留者)の他に永住者(永住権を認められ生活拠点を海外へ完全に移している人)も含みます。
アジアで暮らす日本人の増減
日本経済新聞では「アジアからアジア」への移住が近年の大きな特徴として挙げています。以下、引き続き日本経済新聞の引用です。
2000年には世界全体の移住者の約5人に1人がアジア域内だったが、17年は「4年に1人」に上昇。一方、アジア出身者のうち欧米への移住比率は24%から19%に下がった。
(引用:日本経済新聞2018年4月1日付 若者、移住先はアジア)
日本経済新聞は、高い経済成長を続けるアジアが大量の移住者を引き寄せていると見立て、2020年に開催されるドバイ万博へ向けた建設ラッシュの影響を受けて中東への出稼ぎも増えているため、このような現象が起きていると分析しています。また、タイや韓国では20年前後に生産年齢人口(15~64歳)が減少に転じる見通りで、海外からの労働力や人手を補っていると述べています。
では、アジアで暮らす日本人移住者は、どの程度増えているのでしょうか?日本人の海外移住先アジア上位国をチェックしてみましょう。
【 5年前と比べる アジア人気上位国で暮らす日本人 】
国名 | 5年前 | 現在 | 増減 |
中国 | 150,399 | 128,111 | ▲22,288 |
タイ | 55,634 | 70,337 | 14,703 |
韓国 | 33,846 | 38,045 | 4,199 |
シンガポール | 27,525 | 37,504 | 9,979 |
マレーシア | 20,444 | 23,693 | 3,249 |
台湾 | 15,870 | 21,887 | 6,017 |
インドネシア | 14,720 | 19,312 | 4,592 |
フィリピン | 17,822 | 16,977 | ▲845 |
ベトナム | 11,194 | 16,145 | 4,951 |
インド | 7,132 | 9,147 | 2,015 |
カンボジア | 1,479 | 3,049 | 1,570 |
(単位:人)
ご覧の通り、日本人もアジア各国への移住は概ね増えており、大きく数を減らした中国に関しては、5年前あたりに日系企業の中国進出がピークを迎え、一時的に駐在員などビジネス絡みで長期滞在を行った人が多かったことも関係していると推測します。
フィリピンに関しては、3ヵ月以上の移住者は5年前より減っていますが、短期間での語学留学者は急増しています。しかし、フィリピンの留学ビザは大学などに進学する人のみが取得でき、語学スクールへの留学生は書類上(統計上)留学生としてカウントされず、さらに3ヶ月未満の短期留学を繰り返す学生や社会人が多いこともあって、この数字には反映されていません。実際には多くの日本人がフィリピンと日本を往来しており、推定では日本人留学生(語学スクール生)の数は年間17万人とも言われています。
増加する若者の海外移住
日本では若者が「海外で暮らす」と聞くと、留学などを思い浮かべ裕福な印象を受けますが、世界の若者の移住者の中には出稼ぎ労働者も含まれています。また、島国である日本では国の外へ行くことは旅行など特別かつ贅沢な印象を持たれますが、陸続きの国であれば、さほど珍しいことでもありません。
世界の移住者の中で非常に多い年齢層は、20代または20代未満の若年層。先程も述べたように留学や出稼ぎなど目的は様々です。それでは、日本の海外移住者の年齢別割合は、どうなっているのでしょうか?
【日本人 海外移住者の年齢別割合】
年齢層 | 移住者数(人) | 割合 |
20歳未満 | 298,167 | 22% |
20代 | 158,530 | 12% |
30代 | 244,455 | 18% |
40代 | 285,348 | 21% |
50代 | 169,822 | 13% |
60代以上 | 182,155 | 14% |
日本人の海外移住者で最も多い年代は20歳未満の未成年。留学生も多いですが、20代~40代の親御さんの海外赴任に伴い、お子さんも一緒に現地で暮らすケースが最多です。次に駐在員が多い40代。この年代では駐在員の他に、現地の人との結婚などで永住権を取得している方もいます。
最も少ない年齢層が20代。世界の傾向と比べると、出稼ぎなど仕事を求めて海外へ渡るケースが少ない(海外赴任を除く)ことが理由の一つとして挙げられるでしょう。そもそも、日本の失業率は2017年の時点で2.89%と世界的に見ると極めて低く、「日本人の海外移住先上位50ヵ国」の国と比較をすると日本よりも失業率が低い国は4ヵ国しかありません。
【海外移住先 人気上位国の失業率】
世界の主要国の中で、2017年時点で最も失業率が低いとされているのは、タイ。失業率は0.75%前後です。次いで、カンボジアの1.80%、シンガポールの2.08%、ベトナムの2.33%と続きます。2.89%の日本は失業率が低い方から5番目、以降はスイス(3.46%)、マレーシア(3.45%)、インド(3.46%)…と続き、失業率が高い国ベスト5は南アフリカ共和国(26.73%)、スペイン(19.64%)、イタリア(11.65%)、ブラジル(11.27%)、トルコ(10.91%)となっています。以降、フランス(10.04%)、コロンビア(9.20%)、フィンランド(8.79%)、アルゼンチン(8.47%)、アイルランド(7.91%)と続き、概ねアジアの国は失業率が低く、ヨーロッパと南米は失業率が高い傾向にあります。
しかし、アジアへ行けば仕事が見つかるのか?と言えば、また別の話。たとえばベトナムは日本よりも失業率が低い一方で日本への出稼ぎ労働者は増加の一途を辿っており、必ずしも失業率の低い国に仕事があるとは限りません。
また、多くの国で自国民の労働環境を守るために、外国人を排除するような動きがあることも事実です。語学スキルや業務経験、専門資格などが求められ、就労ビザの難易度が急激に高くなっている国も多々あります。
日本経済新聞では以下のように記事を結んでいます。
潤沢な移民による労働供給を原動力に経済規模の拡大が続くアジア。アジア開発銀行は、中国の安定成長が続けば50年に世界の国内総生産(GDP)のじつに5割をアジアが握り、産業革命以前の1700年代と同じ状況に戻るとされる。米欧が移民への門戸を狭めるほど、「アジアの世紀」の到来は早まる。
(引用:日本経済新聞2018年4月1日付 若者、移住先はアジア)
日系企業がアジアの多くの国々に拠点を設け、外食チェーン店も積極的なアジア進出を果たしています。これらのことからも分かる通り、豊富な人材と若さで未来への希望が詰まっているアジア。海外移住先としても生活費のコスト面や日本との時差、移動距離など魅力がいっぱい!
まずは興味を持つことから始めてみませんか?ポテンシャルを秘めたアジアの国々は、どこかゆったりしているのに無限の可能性が広がっており、熱気で包み込まれるような魅惑のパワーに満ちています。